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上五島出身ママが次の出産に踏み出せないわけ【産めない島の産声ストーリーvol.3】

  • 執筆者の写真: しまの授乳室事務局
    しまの授乳室事務局
  • 10月10日
  • 読了時間: 4分

Cさんは新上五島町出身の20代の女性。夫も同じく上五島の出身で、現在は上五島で1歳の長男と3人で暮らしています。上五島で初めて経験した長男の妊婦生活は大きなトラブルもなく、上五島病院での出産・それからの育児も、家族やふるさとに支えられながらスタートを切ることができました。

しかし2025年の春、次の子どもを考え始めた矢先に上五島病院の分娩休止の噂が飛び込んできたのです。

今回は、新上五島町出身の女性が感じる「本土出産への不安」について話を聞いてきました。

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「上五島病院で産めなくなるかもと聞いてどう思いましたか?」


「やはり“産めなくなるらしい”と聞いてショックは受けました。そのあと“やっぱり産めるかもしれない”という話がでたり、でも結局“やっぱり産めない”に戻ったり。あの頃(2025年春ごろ)はずいぶん不確かな情報に揺れましたよね。」(上五島病院は、2025年6月に正式に分娩休止を発表


Cさんはもともと慎重な性格。大きな決断をするときは、自分の目で確かめ、納得したうえで動きたいタイプです。「出産は一大イベントです。安心・安全にお産したいからこそ、信頼できる情報を自分で得たい。だけど今はなんだか不安定で、“本土の病院で産むってどんな感じなのか”はっきりイメージできず、漠然とした不安を抱えています。」


一人目のときとは、まるっきり違うことだけは確か


当初、Cさん夫婦は「長男と2歳差のきょうだいを」と考えていました。けれど、上五島病院の分娩休止を耳にするようになって計画は考え直すようになったそうです。

「お産のイメージがまったくつかめない状況で、“じゃあ次を”と判断する勇気は持てませんでした。一人目は上五島病院だったし、二人目となると本土での出産が確実。でも夫婦ともに新上五島町出身だと頼れる人もいなくて…。今は、長男の時とは全く違う妊娠・出産になることだけがはっきりとわかっています」


「本土での出産に踏み切れない理由がありますか?」

これから家族を迎えたいと考えるCさんですが、なかなか前向きに踏み切れない理由があるようです。


  1. 長男との関係


     「今は母親にべったりの時期で、私でないと泣き止まない。そんな子を置いて1か月も島外に行くのは、考えただけで胸が締めつけられます。息子のストレスになってしまうのでは、と心配で…。」


  1. 本土での暮らしの不安


     「1人目は上五島病院だったので出産前も友人から話を聞いたりしてイメージできたし、一度経験したので今はどんな場所か知っています。でも次は本土の病院。知らないというのはやはり不安ですし、周りにもなかなか経験した人がいない。1か月近く暮らすことになる本土の滞在場所もそう。“あれ?イメージと違う”となった場合、また一から計画することになるのではと心配しています」

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さまざまな問題に、丁寧に納得がいく対応したいと考えているCさんにとって、長男の心のケアや計画も大切にしたいこと。だからこそCさんは次の妊婦生活で起こりうる、「一人目の妊娠では経験することがなかったそれら」にどう対応したらいいのか、ずいぶん長く考え続けているようです。


安心してお産を待つ自分を想像するには、まだまだ情報が欲しい


とはいえ「上五島では出産できない」という事実は変わらないんですよね、とCさんは語ります。

「長男のケアについては家族の問題なので、家族の考えや落としどころを見つけなきゃと思います。ただ、最近耳にしたのが『出産予定の本土病院が4箇所の選択肢の中からしか選べない』というウワサです。」

実は10月の分娩休止以降、本土出産を待つ島の妊婦さんたちが、希望する個人病院ではなく県内の総合病院等での出産へ転換を求められることが起きているそうなのです。それにより、急や予定変更やキャンセル対応に迫られ、島の妊婦さんはじめCさんのような立場の方が不安をさらに募らせています。

当初の説明が変化している印象を受ける
当初の説明が変化している印象を受ける

様々な情報に翻弄され半年が経過してしまい


この分娩をめぐる問題に対して、“前向きに考えたい”と“大丈夫かな”の二つの気持ちを行ったり来たりしながら半年近く持ちつづけてきたCさん。慎重派な彼女は、日々さまざまな情報に揺れる町の様子を見つめ続けています。


「きっと自信をもって本土で出産できる!と思えるまでには、まだ時間がかかるような気がします。でもその間にも時間は経過するし、家族の暮らしも変わり続ける。いつがチャンスなのかわからなくなってきました」


いつか、大丈夫だよと励ましあえる町になってほしい


納得したうえで判断したり行動したりしたいと考えていた慎重派のCさんが、「どうすれば本土での出産を前向きに考えられるか」を模索している様子に、しまの授乳室も安易に「大丈夫だよ」とは言えませんでした。それは私自身もこれからのお産がどうなるのかまったくわからないから。


でもいつか「大丈夫だよ」と上五島の女性同士で励ましあえる空気感が町に広がってほしい。そのためにも、島の妊婦さんたちとその家族に寄り添った対応や納得のいく丁寧な説明を求めています。

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