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転勤で島に。長大病院での出産を控える悩みと想い【産めない島の産声ストーリーvol.4】

  • 執筆者の写真: しまの授乳室事務局
    しまの授乳室事務局
  • 11月13日
  • 読了時間: 5分

転勤で上五島に来て暮らすDさん。県外出身の夫と二人の子どもと4人で暮らしており、この冬3人目の出産を控えています。

そんなDさんへ、上五島にすぐさま頼れる身内がいない状況での困りごとや、今秋からの上五島病院の産婦人科の体制変更、分娩予定の病院への想いを取材しました。


写真はイメージです
写真はイメージです

ふたりのお子さんの出産はどんな感じでしたか?


「実は上の子は長崎県では出産していなくて、二人とも福岡で出産しました。」

自身も転勤のあるお仕事につきながら、ご実家のご両親も転勤が多いと話すDさん。頼れる家族がいつも近くにいない状況で、上の子の出産時は親戚が暮らす福岡での出産を経験されたそうです。

そんなDさんは、この冬に控える3人目の出産を長崎大学病院で予定しています。


長崎大学病院に決まった背景は?


「妊婦検診で『ハイリスク』と言われたためです。珍しい症例のため、長崎県内であれば長崎大学病院でしか対応ができないと、必然的にそこに決まりました」

上の子の妊娠期間中にも、自宅安静しなければならなかった期間や切迫早産を経験したこともあり、安心・安全を大切にと考えるDさん。しかし、長崎大学病院に通う「上五島⇒本土通院」が簡単ではないようで…。


上の子対応・検診にかかる時間・アクセス…。本土への検診はどんな感じですか?


Dさんが本土へ通院する場合の、スケジュールの一例です。★←Dさんの心配事


7:45 乗船(上五島⇒長崎港)★上の子の保育園の送迎

9:30 長崎港到着

移動(バス・路面電車)

10:00 病院受診

13:00 病院終わり

16:00 乗船(長崎港⇒上五島)

18:30 上五島着★上の子の保育園送迎


先述の通りDさんには2人のお子さんがいます。保育園への送迎は船の時間の都合上Dさんができないため、旦那様が代わりに行くそうですが、仕事の都合もあり、だれかに頼めるならそうしたいという希望もあります。


また、長崎港から長崎大学病院まではバスや路面電車のアクセスが良くなく、不便を感じるそうです。そして、病院についてからも、10:00に予約していたとしてもずいぶんと待たされるため、終わるのが13:00になってしまうことも負担だそう。

そして帰りの船も最終便になるため、またまた保育園の送迎問題が発生します。


「もし保育園の送迎が難しい状況になったとしても、上の子を本土での妊婦検診に連れていくことも難しく(長崎大学病院の産婦人科に子どもを連れていくためには医師の許可が必要)、また子どもを連れて行くとなると船代も自費であまり現実的ではありません。ファミリーサポートを利用して保育園の送迎を解決すればいいのでしょうけど、利用登録のために時間をさけず、また利用開始してもマッチングがうまくいくのか心配で、まだ活用できていません。」

 

上五島に家族がいないため夫婦で協力して育児をするDさん。誰かに頼むことも考えるけれど、人手が必要な事態は急に起きてしまい結局どうにかしてぎりぎりのところを乗り越えているようです。夫婦二人で育児をこなすために工夫が必要だと語ります。


妊婦の上五島から本土への移動は負担が少なくない
妊婦の上五島から本土への移動は負担が少なくない

出産前後はどのように過ごされるご予定ですか?


「出産1か月前に長崎本土へ渡り、出産後は産後の検診や1か月検診を終えてから上五島に戻ろうと思います。上の子は夫と義母(県外にある夫の実家から上五島へ駆けつける)がサポート予定です」

上の子の保育園の行事を大切にしたい、という気持ちから、なるだけ今の暮らしを維持しながら出産を迎える予定なのだそう。出産までのプランを決めた夏ごろから「ママはしばらくみんなと離れて暮らすからね」と子どもたちに言い聞かせ、家族で想いをひとつに出産を迎えます。

またDさんご本人は、偶然実のご両親が長崎へ転居したこともあり、幸い「里帰り出産」が実現しました。「実家の場所は長崎大学病院から距離はありますが、万一は自家用車か陣痛タクシー※を利用して病院へ迎えるのは安心です」


※陣痛タクシー

陣痛タクシー・ママサポートタクシーとは、妊娠中や子育て中の妊産婦をサポートするタクシーサービスのこと。ドライバーは研修を受けており、車内には防水シート等も準備されています。

 

上五島の妊婦さんは総じて県内の4つの病院で出産を求められていますが…

 

「私の場合は妊娠初期の段階で、自身の健康状態が理由でハイリスクだと言われたから、納得したうえで大学病院での出産を予定しています。でも、もし何も健康面でリスクがなかったとしたら個人クリニックを希望していたと思います」


実はDさんは、上の子たちを福岡の個人クリニックで出産したのです。そこは分娩方法の選択肢があり、また2人目の出産の場合は割引されるなど決め手が多かったのだそう。「2人目の出産で無痛分娩が選択できたことは、上の子の育児が待っている産後のことを考えると体力を温存できありがたかったんですよ」

しかし長崎大学病院では、無痛分娩は医師が必要と判断する場合のみ選択できるため、今回はその必要がないとの判断から自然分娩の予定になったのだそう。


Dさんは自然分娩も無痛分娩も経験したからこそ、そのメリット・デメリットもわかったうえで、選択肢があることや立ち合い出産の希望が通りやすい個人クリニック独自の魅力があると語ります。

 

不便はあるけれど、上五島での育児が気に入っている

 

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目まぐるしく変化する状況に身を置くDさんですが、Dさんとご家族は上五島の暮らしがとても気に入っているんだそうです。

「これまでも転勤でいろいろな場所に住んできましたが、上五島の人たちほど親しくなったりすることはありませんでした。でも上五島では、保育園の保護者のみなさんとも仕事でのつながりのある方たちとも親しくさせてもらい、上五島での暮らしが気に入っているんです」


様々な場所で暮らしたくさんの人とのかかわりの中で歩んでこられたDさん。島で出産できないことや病院の状況などに当事者として大きく影響を受けながらも、変わらず上五島を好きなこと、どんと構えて3人目の誕生を心待ちにする様子に、なんだか勇気づけられた筆者でした。Dさんお話を聞かせていただきありがとうございます!

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